業務マニュアルの品質を安定させるためには、表記ルールを統一することが重要です。

業務マニュアルを作成していると、次のような悩みを持つ方もいるでしょう。

  • マニュアルの解釈が人によって異なる
  • 作成者によって表記や構成がバラバラになる
  • 作成を進めるうちに基準が変わり、品質を維持できない

これらの問題は、マニュアル作成のルールや基準が明確になっていないことが原因です。

本記事では、業務マニュアルに統一ルールが必要な理由と、実際に決めておきたいルールの具体例について詳しく解説します。

品質が安定し、誰が作っても誰が読んでも分かりやすい業務マニュアルを作るための参考にしてください。

業務マニュアルの作り方については、次の記事を参考にしてください。品質を安定させる仕組みづくりを詳しく解説しています。

>>業務マニュアルの作り方|品質を安定させる仕組みづくりを解説

業務マニュアル作成でルール統一が必要な理由

業務マニュアルを作成するうえでルール統一が必要な理由は、以下の3つです。

  1. 人によって書き方が変わる
  2. 書いているうちに書き方が変わる
  3. 読む人によって解釈が変わる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

人によって書き方が変わる

業務マニュアルは、作成者によって書き方が変わるため、統一ルールが必要です。

文章の書き方や見出しの付け方、画像の配置方法などには、人それぞれの癖や好みがあります。そのため、複数人でマニュアルを作成すると、同じ内容でも表現や構成が異なることは珍しくありません。

例えば、ある担当者は箇条書きを多用し、別の担当者は文章で詳しく説明することがあります。また、ボタン名の表示や手順の説明方法も担当者によって異なります。

こうした違い自体に正解・不正解があるわけではありません。しかし、会社として統一された基準がなければ、マニュアル全体の品質や読みやすさにばらつきが生じます。

そのため、判断に迷ったときに立ち返れる基準として、表記ルールや作成ルールを定めておくことが重要です。

書いているうちに書き方が変わる

同じ人が作成していても、マニュアルの書き方は少しずつ変化します。

マニュアル作成を進める中で、「もっと分かりやすくできないか」と改善を重ねるのは自然なことです。その結果、初期に作成したマニュアルと後半に作成したマニュアルで書き方が変わることがあります。

私自身も、1案件で200本以上のマニュアルを作成したことがあります。最初の10本と50本目では書き方が異なり、さらに200本目になる頃には、構成や表現方法も大きく洗練されていました。

改善すること自体は良いことですが、ルールが存在しないと、マニュアル全体の統一感が失われます。また、後から見直そうとしても、何を基準に修正すべきか判断できません。

そのため、作成ルールを定め、運用しながら改善点が見つかった場合はルールにも反映することが重要です。最終的に同じ基準で全体を見直すことで、品質を統一しやすくなります。

読む人によって解釈が変わる

業務マニュアルは、読む人によって捉え方が変わる可能性があるため、解釈がぶれにくい表現ルールの統一が必要です。

マニュアルの目的は、誰が読んでも同じ手順で同じ結果を再現できるようにすることです。しかし、説明が曖昧だったり、一文に複数の操作が含まれていたりすると、人によって解釈が異なる場合があります。

例えば、次のような文章です。

「この場合、先ほど示した位置に、これらのファイルを移します」

こそあど言葉の多用や対象が不明瞭な場合、人によって解釈が異なる場合があります。

「〇〇をクリックして〇〇を選択した状態で〇〇をドラッグします。」

この文章には複数の操作が含まれており、どのタイミングで何を行うのかが分かりにくくなっています。

「画面上部の〇〇ボタンの左下付近」

Webサイトの画面のボタン位置などを示す場合は、曖昧な表現は誤った解釈につながります。特に、頻繁に画面のレイアウトが更新されるようなシステムにおいては、画面の位置に依存しない書き方にしておく必要があります。

業務マニュアルでは、作成者が理解できることではなく、誰が読んでも同じように理解できることが重要です。そのためにも、文章の書き方や説明方法のルールを統一しておきましょう。

業務マニュアルは、人だけでなくAIが参照する情報としても重要になっています。

表記や表現が統一されていないマニュアルは、人だけでなくAIの解釈にもばらつきが生じる可能性があります。

AI時代におけるマニュアル整備の重要性については、以下の記事で詳しく解説しています。

>>AI時代でも、マニュアル整備に“人力”が必要な理由

主な統一ルールの具体例

業務マニュアル作成では、ルールを定めることで品質を安定させることができます。

統一しておきたいルールには、主に以下の5つがあります。

  1. 構成レイアウト
  2. 文章の書き方
  3. 表記ルール
  4. 表記揺れ
  5. その他の書式ルール

それぞれ詳しく見ていきましょう。

構成レイアウト

複数のマニュアルを作成する場合は、構成レイアウトを統一することが重要です。

マニュアルごとに見出し構成や情報の並び順が異なると、読む人は毎回読み方を覚えなければなりません。そのため、同じ種類のマニュアルは同じ構成に揃えることをおすすめします。

例えば、一般的な手順書であれば次のような構成が考えられます。

手順書の構成例

  1. 目的
  2. 事前準備・前提条件
  3. 作業手順
  4. 補足事項
  5. 注意事項

また、システム操作マニュアルの場合は次のような構成がよく利用されます。

システム操作マニュアルの構成例

  1. 目的
  2. 機能概要
  3. 操作画面への動線
  4. 操作手順
  5. 実行結果
  6. 補足事項
  7. 注意事項

文章の書き方

文章の書き方も統一しておくことが重要です。

マニュアルは読み物ではなく、業務を再現するための資料です。そのため、誰が読んでも同じ解釈になる文章を目指す必要があります。

特に、以下のルールは設定しておくことをおすすめします。

(1)1文1メッセージを徹底する

原則として、1つの文章には1つの操作や結果のみを記載します。

複数の操作を1文にまとめると、解釈が分かれる原因になります。

【NG例】

〇〇ボタンをクリックして〇〇を選択すると、〇〇画面へ移動します。

【OK例】

  1. 「〇〇」ボタンをクリックします。
  2. 「〇〇」を選択します。
  3. 〇〇画面へ遷移します。

(2)こそあど言葉を控える

「これ」「それ」「あれ」「この場合」などの表現は、人によって解釈が異なる場合があります。

マニュアルでは多少文章が長くなっても、対象を明確に記載することをおすすめします。

【NG例】

この場合は「確定」を押します。

【OK例】

確認画面が表示された場合は「確定」ボタンをクリックします。

(3)主語と対象を明確にする

誰が何を行うのかを明確に記載します。

【NG例】

データを確認します。

【OK例】

管理者が顧客データを確認します。

文章ルールを統一することで、マニュアルの再現性が高まります。

表記ルール

表記ルールは、人によって最も差が出やすい部分です。

正解があるわけではありませんが、基準がないとマニュアル全体の統一感が失われます。

例えば、以下のような項目は事前にルール化しておくとよいでしょう。

【統一ルール例】

項目統一ルール例説明
表記です・ます調語尾は「です・ます調」に統一
表記太字強調
括弧の使い方「〇〇」ファイル名、画面名、ボタン名、タブ名
括弧の使い方【〇〇】※太字例、補足、図表の見出し
括弧の使い方(〇〇)一般的な文章の補足に使用
番号の使い方(1)(2)見出しに使用
番号の使い方1.2.3.手順に使用
システム特有「〇〇」ボタンボタン名
システム特有「〇〇」タブタブ
システム特有「〇〇」ページページ
システム特有【例】ホーム > マスタ管理 > 顧客管理操作画面へのナビゲーション

【補足】

Webサイトに掲載するマニュアルには環境依存文字は避ける事が望ましいです。(例:①②③など)

表記ルールを決めることで、誰が作成しても同じ品質でマニュアルを作れるようになります。

表記揺れ

表記揺れは、読み手の混乱や検索性の低下につながります。

複数人で作成する場合はもちろん、1人で作成する場合でも表記揺れは発生します。そのため、事前に表記揺れ一覧を作成しておくことをおすすめします。

【表記揺れ一覧の例】

推奨表記例使用しない表記
WebWEB/web/ウェブ
URLUrl/url/アドレス
PDFpdf
ExcelEXCEL/excel/エクセル
メールEメール/e-mail 
顧客お客様 
そのうえその上
できます出来ます

特にシステム操作マニュアルでは、画面上の名称の扱いを統一することが重要です。

【システム特有の表記揺れ一覧の例】

推奨表記例使用しない表記
ログイン log in/LogIn 
クリックします押します
入力します 記入します
更新します 修正します 
チェックボックス チェック欄/チェックBOX
プルダウンドロップダウン/プルダウンメニュー、
トグルスイッチスイッチ/トグルボタン
ドラッグアンドドロップドラッグ&ドロップ
ダウンロード DL 
データベースDB

設定対象の画面に移動する動線は、以下のナビゲーション表記を基準にします。

 ホーム > マスタ管理 > 顧客管理

表記揺れ一覧は一度作って終わりではありません。マニュアル作成を進めながら随時更新していくことで、より実用的なルールになります。

その他表記ルール例

あわせて、以下の項目なども統一しておくと品質が安定します。

  • 括弧の付け方
  • 手順番号の付け方
  • 画像の配置位置
  • 画像のサイズ
  • 画像への注釈方法

構成レイアウトを統一することで、読む人にとっても分かりやすいマニュアルになります。

統一ルールで品質を高めるポイント

統一ルールは、作るだけでは不十分です。

ルールを現場に定着させ、実際のマニュアル品質を高めるためには、以下の3つの仕組みづくりが重要です。

  1. ゴールドサンプルを作る
  2. レビュー体制を構築する
  3. チェック体制を整える

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ゴールドサンプルを作る

ルールを定着させるためには、ゴールドサンプルを作ることが重要です。

マニュアル作成ルールを作成しても、実際には十分に活用されないことが少なくありません。作成者は一度ルールを読んでいるはずですが、実務の中で完全に再現することは難しいためです。

理由は、ルールだけでは完成形をイメージしにくいからです。

例えば、「1文1メッセージ」「表記を統一する」とルールに書かれていても、実際にどのようなマニュアルが理想なのかが分からなければ、作成者ごとに解釈が分かれてしまいます。

そこで有効なのが、ゴールドサンプルです。

ゴールドサンプルとは、ルールを反映した理想的なマニュアルの見本です。必ずしも全体を作る必要はありません。1つの手順書や1章分だけでも構いません。

むしろ、ゴールドサンプルを作成する過程で、「画像の位置はどうするか」「ボタン名はどう表記するか」といったルールが具体化されていきます。

新しい作成者が参加した場合も、ルール集だけを渡すより、ゴールドサンプルを見てもらう方が品質を揃えやすくなります。

ルールを文章で伝えるだけでなく、完成形を示すことが品質向上の近道です。

ゴールドサンプルの考え方や作成手順については、以下の記事で詳しく解説しています。

>>マニュアルのゴールドサンプルとは?品質を安定させる作り方を解説

レビュー体制を構築する

大量のマニュアルを作成する場合は、レビュー体制を構築することが重要です。

どれだけ詳細なルールを作っても、最初からルール通りのマニュアルを作成することは簡単ではありません。

これは作成者の能力の問題ではなく、ルールを理解することと、実際にルールを適用して文書を作ることが別のスキルだからです。

そのため、マニュアルを作成する担当者と、ルールに沿っているかを確認する担当者を分けることをおすすめします。

例えば、

  • 作成者:業務内容を整理して文章化する
  • レビュアー:ルールや品質基準に沿っているか確認する

という役割分担です。

実際に大量のマニュアルを整備するプロジェクトでは、この分業体制がよく採用されます。

また、作成とレビューでは求められる視点も異なります。

作成者は内容を正確に伝えることに集中します。一方でレビュアーは、表記の統一や読みやすさ、ルールへの適合性を確認します。

そのため、1人で両方を行うよりも、役割を分けた方が品質と効率の両立がしやすくなります。

レビュー体制は、ルールを現場へ浸透させる仕組みとして有効です。

レビュー体制については、次の記事で詳しく解説しています。

>>レビュー体制とは?業務マニュアルの品質を高める仕組みを解説

チェック体制を整える

マニュアル完成後の最終チェック体制も重要です。

マニュアル作成中にレビューを実施している場合でも、最終チェックは別工程として設けることをおすすめします。

なぜなら、マニュアル作成は長期間にわたることが多く、作成途中でルールや考え方が変化するためです。

例えば、

  • 初期は「押します」と記載していた
  • 途中から「クリックします」に統一した
  • ボタン表記のルールを途中で変更した

といったケースは珍しくありません。

また、100ページを超えるマニュアルや複数人で作成するプロジェクトでは、表記揺れや構成の差異がどうしても発生します。

そのため、完成後に全体を同じ基準で見直す工程が必要です。

最終チェックでは、以下のような項目を確認するとよいでしょう。

  • 表記揺れがないか
  • 見出し構成が統一されているか
  • 手順番号に抜け漏れがないか
  • 画像サイズや配置が統一されているか
  • ゴールドサンプルと同じルールで作成されているか

最終チェックを実施することで、マニュアル全体の品質を均一化しやすくなります。

チェック体制については、次の記事で詳しく解説しています。

>>チェック体制とは?業務マニュアルの品質を保証する方法

ルール作成、レビュー、最終チェックまでを仕組みとして整えることで、継続的に高品質な業務マニュアルを作成できるようになります。

まとめ|業務マニュアルの統一ルールで品質を高めよう

業務マニュアルの品質を安定させるためには、統一ルールの作成が欠かせません。

本記事では、業務マニュアル作成に統一ルールが必要な理由や、実際に決めておきたいルールの具体例について解説しました。

また、ルールを作るだけではなく、ゴールドサンプルの作成やレビュー体制、最終チェック体制を整えることで、より高品質なマニュアルを継続的に作成できるようになります。

業務マニュアルは、作成者によって品質が変わるものではなく、誰が作っても一定の品質を維持できる仕組みを作ることが重要です。

まずは、自社の業務マニュアル作成ルールを整理し、品質向上と作成効率の向上につなげていきましょう。

業務改善の進め方については、次の記事を参考にしてください。見える化・仕組み化・マニュアル化の3ステップを詳しく解説しています。

>>業務改善の進め方|見える化・仕組み化・マニュアル化の3ステップ

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